昔ながらの関係
仕事をしていましたら
自宅の方に来客…
『あ、こんちは!』
知らないおいさんです。
『葉牡丹あげるから』
そういって庭の空の植木鉢をさぐりはじめます。
えっと…どなたですか?
ま、いいか。
軽くて大きいやつを探せと言うので
一緒に探します。
これでどうでしょうか?
『よそ、これにしよう!』
『ところで、この車はあんたのか?』
はい。いかにも私の車です。
『よし、俺を乗せてってくれ』
え?どこへ?
私の予定などおかまいなしです。
と言うかだれ?
新手の誘拐でしょうか?
家に戻り車の鍵を持って
エンジンかけて…
どこへ行けばいいでしょう?
『○○の畑知ってるか?』
はい。
ということで、歩いてもいけるのですが、車で畑まで…
『これでいいな!』
いくつかある葉牡丹の中から大きいものを選んで
これを下さるという。
あ、有難うございます。
『一番いいやつあげるからな』
そう言って
ガサッと植木鉢に入れて
車に乗せろと…
おお、運ぶの大変だろうと車で来たのですね
葉がいたむからシートをどかせとか
色々指事をうけ
『あとは、あんたの責任だからな、持ってけ』
と…
頂いてきました。
おいさんは、親の畑仲間でした。
昔ウチは小さなタバコ屋でした。
タバコ屋といっても、パンやジュースやお菓子も売ってまして
日頃から戸があいているので
ご近所さんが用事があると勝手に入ってきまして『こんにちは!』
そこは居間でした。
子供のころ
親は仕事をしていたので
私は、近所のウチや会社へ行っては
ちゃっかりお茶をご馳走になったり
遊んでもらったりしていました。
地域の方に育ててもらいました。
うちがタバコ屋と鉄工所、隣がセメント屋、ブラシ屋、向かいが畳屋、斜め前に喫茶店、養魚所、バイク修理屋、印刷屋、電気屋、お掃除関係の会社、仕立屋、スーパー的なの、書道塾、薬局、蕎麦屋、クリーニング屋…
考えてみたら個人事業主だらけで
通りに仕事場があって
いつも誰かがいましたね。
だから、私がフラフラ暗くなるまでカエルとりをしていても
誰かがみててくれました。
私も店の窓に腰かけて外を見るのが好きでした。
今は、すっかりそんな姿もなくなって
ひっそりとしています。
道が広がって…色んなことが変わったけど、一番変わったのは
人の気配です。
人は増えているのでしょうけど
人気がなくなりました。
また、新しく出来た分譲地に続々と住宅が建っています。
そのまだ工事されてないところに車をとめながら
葉牡丹をつむ私。
こういうちょっと強引な感じが
まだ続いているのが意外といいなと感じます。
大きなお店が賑わっていますが
小さなお店や小さな会社があることは
実はとっても大切だったりします。
そういう場所がどれだけあるか…
実はそれが地域が本当に生きているかどうかじゃないかと思ったりします